Parsleyのリハビリ部屋

ちょっと人生に疲れたParsleyが、リハビリのつもりでつらつら言葉を重ねていくブログです。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』にとっての「愛してる」は「恋愛」ではなく「思慕」だという話

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(c)暁佳奈・京都アニメーションヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

 年の瀬にも関わらず、知人と来年春に新作映画が公開される『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』について語り合っていたので、忘れずにメモしておきたい。それは、この作品における重要なキーワード「愛してる」の意味合いだ。

 まず思い出して頂きたいのは、4話から11話にかけて、どのような「愛」について語られていたのか、ということ。そこでは全て「家族」がテーマだった。4話はアイリスと両親、7話はオスカーとオリビアの父娘で、10話はアンとマグノリア夫人の母娘。11話ならば兵士とその両親と恋人。これらはわかりやすい。また、5話のシャルロッテとアルベルタは血縁でないものの実質的な「母と娘」だろう。

 それでは「戦闘人形」だった頃のヴァイオレットが描かれた8・9話はどうだろう? ギルベルトとヴァイオレットの関係を「恋愛」と捉えるのは若干無理がある。ヴァイオレットは「愛してる」を理解していないからだ。むしろギルベルトは、彼女にとっての「父親」として振る舞おうとして、それが果たせていないことに苦悩しているように見えてならないのだ。となると、これも「家族」の物語であると捉えるべきだ。

 C・H郵便社に連れ戻されたヴァイオレットは、自室で塞ぎ込む。彼女を心配するカトレアやエリカ、アイリスが描かれ、最後に一歩踏み出したヴァイオレットに「生きていていいのでしょうか?」と問われたホッジンズは思わず涙を見せる。これは「会社」が擬似家族としての役割を果たしているエピソードだといえるだろう。

 リオンの淡い恋を描いている6話でも、彼が幼少期に父親が行方不明になり、母親がそれを追って彼のもとを去ったことが本人の口から語られる。ギルベルトの不在に「淋しさ」を感じていたと気付かされるバイオレットだが、この話を聞いていたからこそ、7話でオリビアの死についてオスカーから聞かされて涙したのだと見る方が自然だろう。となると、この話も「家族」の「愛」というものについて彼女の内面に刻み込まれた重要なストーリーだと見るべきだ。

 

 つまり、この作品で一貫して描かれている「愛」とは、「色恋」ではなく「親愛」や「思慕」のことだと捉えなくてはならない。そこを正確に感じ取れないと、ヴァイオレットが「愛してるも、少しは分かるのです」という言葉の意味合いが根底から変わってしまうだろう。そのあたりを新作でそのまま描くのか、一歩踏み出したストーリーにするのか、今から楽しみだ。

 

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(c)暁佳奈・京都アニメーションヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

 ところで、個人的には6話でリオンがハリー彗星の観察に誘う場面で、「はい、見たいです」と言うヴァイレットが最かわだと思うのですけれど、皆さんいかがでしょう?

 

 そんなこんなで、2019年の秋冬は『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』について考えに考えているうちに大晦日を迎えてしまった次第。新作映画について思いを馳せつつ、皆さんの2020年がよい年になるよう祈りたい。

 

www.violet-evergarden.jp